洪水に有効?“水に浮く”超小型電気自動車に挑む日本ベンチャーの開発者魂【前編】

全長約2.5メートル、全幅約1.3メートル。世界最小レベルでありながら、4人乗りという超小型電気自動車(以下、超小型EV)が、いよいよ量産化に向けて大きな一歩を踏み出す。開発したのは2013年2月創業のベンチャー企業、FOMMの鶴巻日出夫社長だ。まずはタイ、その後アジア地域での普及を目指す。そんな鶴巻社長に、超小型EVの特徴や開発の経緯、今後の目標を伺った。前編と後編の2回にわたってお届けする。前編では、開発の経緯と試作車完成までの道のりについて紹介しよう。

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超小型EVで地球温暖化防止に貢献したい

 現在、日本では公道を走ることが認められている超小型EVは1人乗りしかなく、用途もコンビニエンスストアのデリバリーなど業務用が中心となっている。国土交通省が2人乗りの超小型EVの導入に向けて実証実験を推進している最中だが、法制化の目途は立っていない。

 それに対し、鶴巻氏が開発した超小型EVは4人乗りで、しかもパーソナルユース用が特徴だ。加えて、台風や洪水、津波などの災害時には水にプカプカ浮き、タイヤに装備されたモーターで水中を進むこともできる。

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 鶴巻氏がパーソナルユースの超小型EVにこだわる理由は、地球温暖化防止に少しでも貢献したいという強い思いからだ。鶴巻氏はこう語る。

 「ここ数年、世界各国でゲリラ豪雨や巨大台風など異常気象による大規模災害が頻発しています。CO2排出量の削減は喫緊の課題であり、その中で、長年自動車メーカーに勤め、自動車の設計、開発に携わってきた私ができることは、パーソナルユースを目的とした超小型EVの開発しかないと考えました」

 現在、自動車から排出されるCO2の占める割合は、世界規模で約20%。そのため、走行中にCO2を排出しないEVに期待が高まっているものの、なかなか普及しないのは、高価格で、ガソリン自動車やハイブリッド車に比べて航続距離が短いからだ。

 それに対し鶴巻氏が開発した超小型EVは、既存のEVに比べてバッテリー容量が少なくて済むため、より低価格を実現できる。また、自宅のコンセントを使えば、約6時間でフル充電が可能だ。急速充電は行わないので、バッテリーの長寿命化にもつながる。

ネットで交換用電池を管理する「バッテリー・クラウド」

 加えて、鶴巻氏は「バッテリー・クラウド」も考案している。バッテリー・クラウドとは、既存のガソリンスタンドやコンビニエンスストアなどに保管しておく交換用バッテリーをインターネット経由で管理するシステムのことだ。

 鶴巻氏が開発した超小型EVには、4個の小型バッテリーが各座席の下に装備されている。ドライバーは自分でバッテリーを脱着できるので、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアに交換用バッテリーを保管し、それをバッテリー・クラウドで管理しておけば、外出先で必要に応じてバッテリーを交換できる。これであれば、航続距離を心配する必要がない。

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 日本は少子高齢化が進み、自動車の出荷台数は年々減少傾向にある。自動車の世帯普及率も86%以上と高い。それに対し、タイの現在の自動車の普及率は60%程度で、今後も高まっていくと考えられる。そういった国にEVを普及させた方がCO2の削減効果は大きいというわけだ。

 「しかもタイはアジアの中でも親日家が多くいる国で、タイに工場を持つ日本の部品メーカーも多いことから、ビジネス展開がしやすいと考えました。さらにタイは洪水が頻発しており、年々深刻さが増しています。その点で、“水に浮く”当社の超小型EVであれば、洪水による被害の低減にも寄与できるのではないかと考えています」と鶴巻氏は語る。

 鶴巻氏が超小型EVを水に浮く仕様にしたのは、母親の一言がきっかけだった。

 「私は静岡県磐田市出身で、実家は海岸からほど近い距離にあります。ある日、東日本震災の津波の映像を見ていた実家の母が私に、『私は足が悪いので、もし巨大地震が発生して大津波に襲われたら、たぶん逃げられないと思う。そのときは自分の運命を受け入れたい』と言ったのです。私はそれを聞いていたたまれない気持ちになりました。そこで、緊急時には水に浮くEVにすることを思いついたのです」(鶴巻氏)

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パーソナルユースのEVの普及を目指し一念発起

 鶴巻氏は元々自動車メーカーの技術者で、最初はスズキ自動車に入社し、約15年間にわたりスクーターやモトクロス用バイクを設計していた。その後、トヨタ車体の前身であるアラコに転職し、そこにも約15年間在籍。現在、デリバリー用として実用化されている1人乗りの超小型EV「COMS(コムス)」の開発に携わった。

 しかし、業務用ではEVを広く普及させることはできない。そこで一念発起し、1人で立ち上げたのがFOMMだったのだ。

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 「現在、2017年9月を目途にタイでの販売開始を目標としていますが、この3年半は困難の連続でした。とはいえ、諦めるという選択肢は私にはありませんでした。ひたすらどうすればうまくいくかということだけを考え、行動し続けた日々でした」と鶴巻氏は振り返る。

 超小型とはいえEVの試作車を開発するには数千万~1億円のコストがかかる。しかし当初の鶴巻氏はそんな巨額の資金は持ちあわせていなかった。

 そこで鶴巻氏は会社員時代のあらゆる人脈を総動員し、協力してくれそうな自動車部品メーカーを片っ端から訪問し依頼して回った。しかしながら、協力してくれる会社はなかなか現れなかった。

 当時から鶴巻氏は1台の販売価格を約100万円、年間1万台の量産を想定していた。しかし、通常大手自動車メーカーの場合、最低でも年間5万台、それを4、5年キープし続けることが大前提となっている。FOMMの年間1万台という規模では、部品メーカーにとって少なすぎて採算がとれないというのだ。

石川県の部品メーカーが手を差しのべる

 そうした中、強い思いが実を結び、2013年3月、「面白そうじゃないか」と言って協力してくれるという企業が現れた。石川県加賀市に本社を置く自動車部品メーカーの大同工業だ。

 同社は出資に加え、2人の社員の派遣とタイにある同社の工場での生産を約束してくれた。さらにそれを聞きつけた愛知県名古屋市に本社を置く日本特殊陶業も、出資を表明してくれた。

 鶴巻氏はこれらの会社からの出資を受け、2013年5月中旬、新たに3人の社員を雇い、総勢6人で超小型EVの試作車の開発をスタートさせた。

 「ところが、あてにしていたベンチャーキャピタルの出資が遅れに遅れ、部品を発注した各メーカーへの支払いが滞ってしまったのです。2013年11月末に支払う約束になっていたのですが、支払えず、頭を下げて1週間待ってもらいました。各メーカーに対しては、我々を信じて部品の製造を請け負ってくれたにもかかわらず、約束が守れなかったわけですから、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今思えば、そのときが一番つらかったですね。結果的にはベンチャーキャピタルが出資の約束を果たしてくれて無事支払うことができ、胸をなでおろしました」と鶴巻氏は振り返る。

 資金面で冷や汗はかいたものの、鶴巻氏らは2014年2月、どうにか試作車を完成させることができた。しかし、一筋縄ではいかない。その後も困難は続くのであった……。

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(後編に続く)

http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/DTrans/ecs/080300036/
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